化学物質のリスクアセスメントに役立つ支援ツールの紹介
化学物質で人体に害を与えないものはなく、
化学物質による健康被害を防ぐため、平成28年6月に労働安全衛生法が改正され、対象の化学物質を使用する事業所全てで化学物質のリスクアセスメントの実施が義務付けられています。
業種、事業場規模にかかわらず、対象となる化学物質の製造・取扱いを行う全ての事業場が対象となります。
今回は、化学物質のリスクアセスメントを実施したいがどうすればよいのか迷われている方におすすめする、リアルタイムモニターを用いた手法と支援ツールについてご紹介します。また簡便に作業環境の日常管理も可能です!ぜひご活用ください。
化学物質のリスクアセスメントとは
化学物質のリスクアセスメントとは、有機溶剤等の化学物質を取り扱う全て事業所が、化学物質やその製剤のもつ危険性や有害性を特定し、それによる労働者への健康被害等のリスクを見積り、リスクの低減対策を検討することです。
事業所のリスクを把握してその対策を行うことで、労働災害が発生しない職場環境を目指しましょう。
▽化学物質のリスクアセスメントについて詳しくはこちら
厚生労働省|職場の安全サイト「化学物質のリスクアセスメント実施支援」
リスクアセスメント支援ツール
厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」に掲載されている『支援ツール』は、リアルタイムモニタの測定結果を用いるリスク評価ツール(excel)です。
『リアルタイムモニターを用いた化学物質のリスクアセスメントガイドブック(以下、ガイドブック)』の内容に基づいて製作されており、専門的な知識がなくても簡便にリスクレベルが判定されます。
ガイドブック(支援ツール)ダウンロード
※本支援ツールは当社の「IVaCE(アイバス)」混合有機溶剤蒸気の成分濃度推定シートの理論・方法の知的財産を「世界中からガス事故をなくしたい」との思いから無償提供しています。(関連特許:特許第6629941号)
リアルタイムモニタ 支援ツール用換算係数表
当社のリアルタイムモニタを上記のツールで使用する際の換算係数表は下記よりダウンロード可能です。
(詳細はダウンロードしたエクセルファイルをご確認ください)
ガイドブック(支援ツール)の概要
ここからはガイドブックと支援ツールの概要をご説明します。
ガイドブック(支援ツール)では、リスク評価に際し、化学物質を取扱う時間で評価方法が異なります。
1日の作業時間の基準を1時間として、作業時間が1時間以下の場合は15分間の短時間評価(ケースAB)、1時間を超える場合は長時間評価(ケースCDE)と、合計5つのケースに分けて評価を行います(下記の表参照)。
※詳細:ガイドブックP.28
なお、経皮吸収を含めた評価はできませんが、単一物質での評価と混合物としての評価が行えます。
評価 | ケース | 説明 |
---|---|---|
短時間評価 | A | ばく露時間全てを測定し、評価に使用する。 ばく露時間が15分間未満の場合には、15分間の平均値に換算する。 |
B | ばく露が最も高い15分間の平均値を評価に使用する。 | |
長時間評価 短時間評価 |
C | ばく露時間全てを測定し、8時間平均値に換算する。 |
D | 最低2時間を測定、残りのばく露を同等とみなし、8時間平均値を算出する。 | |
E | 最低2時間を測定し、日内変動の換算係数を使用して8時間平均値を算出する。 |
混合物の測定について
リアルタイムモニタは、ガス分析装置のような前処理がなく、直接ガスセンサの表面に吸着する化学物質の酸化還元反応を利用しますので、混合物の場合もその場でばく露の増減を見て取ることができます。
一方で、「それぞれの物質濃度を測定することができないため、ばく露限界値と比較することができない。だからリスクの見積りができない」という欠点があります。
しかし、測定値のほかに、混合物のガス状態での組成(構成)比率とそれらの換算係数(感度比率の逆数)があれば、それらの濃度を推算することができます。
それぞれの物質のガス状の組成比率は、以前より同じ混合溶剤を使用していて、作業環境測定や個人ばく露測定を行っていれば、その時の物質濃度を組成比率に置き換えることで代用することができます。
また、新しい混合溶剤を使用する場合などで、ガス状の組成比率がわからない場合は、混合溶剤の安全データシート(SDS) に記載されている含有成分と含有率(重量比率)から、ガス状で存在する組成比率を算出することができます。
支援ツールでは、上記の方法でそれぞれの濃度を推算しています。
ツールの使用方法や当社のリアルタイムモニタについては、お気軽にお問合せください!